梅雨を快適に過ごす食事

梅雨を快適に過ごす食事

梅雨に入ると、じめじめとした蒸し暑い日が続きます。身体が重だるかったり、むくんだり、食欲がなかったり、気分が落ち込んだりしませんか?

今年は新型コロナウイルス感染症の影響もあって、なおさらですよね。

 

こんにちは。薬剤師、国際中医師、国際中医薬膳師の伊東千鶴子です。中医学(中国伝統医学)の知識を踏まえて、日本の気候風土に沿った季節の養生法や薬膳についてお伝えします。

今回は、新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」のなか、この梅雨の季節を健やかに過ごす養生法をお伝えします。

 

薬膳は薬だけじゃない

皆様は、薬膳について、どのような印象をお持ちでしょうか。薬膳は漢方に使われる生薬を多用するもの、身体に良さそうだけど苦く薬臭いものと誤解されることがあります。

 

 

しかし、本来の薬膳とは、毎日の食卓に簡単に取り入れ日々の健康管理をするためのものです。

 

 

薬膳とは

薬膳は中医学の理論に基づく食養生のことで、健康の維持と増進、病気の予防や回復などを目的としています。

食事であるならば、無理なくおいしく摂ることが前提です。

 

食材が身体を温めるのか冷やすのか、身体に入った時にどのような作用をするのか、五臓六腑のどこに働きかけるのかを理解し、食べる人の体質や症状、季節や気候、場所や環境などを配慮した上で、食材を選択し、調理します。

生薬を用いることもありますが、主に私たちがスーパーなどで購入できる食材を使います。

 

梅雨の時期の身体のトラブル

私たち人間は気候による影響を受けやすく、季節の変わり目で急激な気候変化があると、病気の原因となる事があります。※1 これからの季節だと、梅雨によって体調不良を起こす方もいます。

梅雨の季節に起こりやすいトラブルをご紹介します。

 

梅雨の季節に起こりやすいトラブル

梅雨の季節のまとまった雨は作物が育つ、夏の水不足を防ぐなど、自然界に恵みを与えてくれます。けれども、外界の湿が邪となって人体に侵襲すると、頭が重い、身体や手足がだるくて重い、むくみ、目やに、お小水の濁り、おりもの、下痢、湿疹、水虫などの症状があらわれます。

 

湿には重濁粘滞(じゅうたくねんたい、重:重い、濁:汚い、粘:ねばねばする、滞:停滞する)という性質があり、湿邪による症状は治りにくく、多くが下半身にみられます。

 

さらに、梅雨の季節は、消化器系が弱りやすくなります。

 

 

梅雨による消化器への影響

中医学の五臓のひとつ、脾(ひ)という臓は西洋医学の脾臓とは異なり、飲食物の消化吸収をつかさどるところを指します。「脾は湿を悪(い)む(嫌うの意)」といわれています。

 

湿邪によって、脾というところの消化吸収や水分代謝の働きが低下し、食欲不振、腹痛、吐き気、軟便、下痢などの症状がみられ、脾が弱まったために、さらに外部からの湿邪に侵されやすくなります。

 

人体は自然界の変化に影響を受けやすいのです。湿っぽくて、なんとなく気分も沈みがちになってしまう方も多いでしょう。

 

 

 

梅雨におススメの食材

 

梅雨の季節には脾(消化器系)に負担をかけないように、冷たいもの、生もの、油っこいものを控えて、消化のよいものを摂りましょう。

 

湿邪を排出する食材

この時期には、湿邪をお小水や汗で排出するような以下の食材を取り入れるとよいでしょう。

 

玄米、はとむぎ、小豆、黒豆、アスパラガス、えんどう豆、きゅうり、冬瓜、とうもろこし、とうもろこしのひげ、なす、もやし、レタス、西瓜、すもも、メロン、あさり、鮎、はも、昆布、もずく、わかめなど。

水分を摂る時にはお小水で排泄できるよう、本物の塩気を適度に摂りましょう。

 

脾の働きを正常にする食材

また、脾の働きを正常にする以下の食材もおすすめです。

うるち米、玄米、はとむぎ、じゃがいも、山芋、黒豆、大豆、いんげん豆、枝豆、おくら、人参、あじ、いわし、牛肉、砂肝などです。

気の巡りを良くする紫蘇、たまねぎ、にんにくの茎、ピーマン、グレープフルーツ、スパイスなどもいいですね。

 

 

 

新しい生活様式での梅雨対策

新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」で、マスクの着用が習慣化されつつあります。マスクの着用は肺を守るのにも効果的です。

中医学では肺は嬌臓(きょうぞう:嬌はかよわいの意)ともいわれていて、寒熱や外界からの邪に弱く、非常に影響を受けやすい臓です。ウイルスに感染しない、感染させないために、肺と繋がっている口や鼻を外界に晒すことなく、覆うことのできるマスクは必要と思われます。

 

肺は呼吸をつかさどるだけでなく、私たちの身体を構成する基本物質である気(き)、血(けつ)、水(すい:津液/しんえきともいう)を巡らせる働きを持っています。

肺を弱らせないように、マスクで外邪から守ることは大切です。

 

 

マスクで蒸す時に取り入れたい食材

だんだん気温が上昇するこれからの季節に、長時間、マスクを着用していると、肺に熱がこもりやすくなります。

 

肺の熱をさます食材には、豆乳、湯葉(ゆば)、ズッキーニ、枇杷(びわ)などがあります。

また、脾は飲食物から気血水を生み出すところです。気が不足して、気の働きのひとつである防御作用が弱まると、感染症にかかりやすくなります。そうならないように、先ほど挙げた脾の働きを正常にする食材を取り入れるとよいでしょう。

 

 

今年の梅雨は健やかに過ごしましょう

新しい生活様式により、おうちにいる機会が多くなりました。雨の日には、好みのお香を焚いたり、アロマオイルを使ったり、軽く汗ばむくらいお風呂に浸かったりして、湿気をはらい、ゆったりしませんか。

 

バランスの良い、食べ過ぎない、過度のダイエットをしない適量の食事と十分な休息、睡眠は免疫力をアップさせます。この季節を健やかに過ごせたらいいですね。

 

 

 

薬膳の豆知識

※1

私たち人間は季節によって風(ふう)、寒(かん)、暑(しょ)、湿(しつ)、燥(そう)という5つの気候変化を受けます。

熱(ねつ)を含めたそれら6つは六気(ろっき)といい、万物を生長させるのに必要なものです。しかし、その六気が異常にあるいは急激に変化し、私たちの身体に抵抗力がないと、病気の原因となることがあります。これらは六気(風、寒、暑、湿、燥、熱)が風邪、寒邪、暑邪、湿邪、燥邪、熱邪(火邪ともいう)に変化したもので、六淫(りくいん)と呼びます。

 

 

「周礼(しゅうれい)」という中国の書物によると、周時代(紀元前11~8世紀)には既に食医、疾医(内科医)、瘍医(外科医)、獣医の医師がいて、そのなかでも、王の食事の調理や管理を任されていた食医が最高位とされていました。

ここから考えると、日々の食を整え健康でいられる術を持つ者(予防できる者)は、病気を治療する医者と同じ、またはそれ以上に重要という事ですね。

そして、薬膳を普段の食事に取り入れることによって、健やかでいられるならば、私たちは自分自身の、家族の、大切な誰かの現代における食医となりえますね。

 

参考文献:中医薬大学全国共通教材「全訳 中医基礎理論」、日本中医食養学会「食養生の知恵 薬膳食典 食物性味表」

nana
伊東 千鶴子
薬剤師 国際中医師 国際中医薬膳師