
生野菜は体に悪くて病気の危険?消化不良等のデメリットや酵素の効果まで解説!
健康や美容のために積極的に食べたい生野菜ですが、「生野菜は体に悪い」という噂を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?
生野菜は栄養素を無駄なく摂取できるため、体型が気になる方にもおすすめです。しかし生野菜は消化が悪く、体調が優れないときは注意が必要です。調理法によっても酵素やビタミンの吸収率が異なるため、工夫しながら目的に合わせて取り入れましょう。
本記事では、生野菜と温野菜のメリットとデメリット、気になる噂の真相を解説します。野菜を上手に取り入れるためのヒントやおすすめのレシピと合わせて、ぜひ参考にしてみてください。
野菜の目安摂取量は1日350g!野菜に含まれる栄養や緑黄色野菜について解説
野菜は体の調子を整える働きがあり、1日に350gを目安に摂取することが推奨されています。しかし、令和5年国民健康・栄養調査の報告によると、野菜摂取量の平均値は 256.0 g であり、男性 262.2 g、女性 250.6 gと男女共に不足しがちです。
野菜にはビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富に含まれているため、不足傾向にある方は目安量を意識して野菜の摂取量を増やしましょう。
また、野菜は緑黄色野菜と淡色野菜に分類され、中でも緑黄色野菜にはβ-カロテンやビタミンC、葉酸、カリウム、鉄、カルシウムなどが豊富に含まれています。それぞれの違いと身近な野菜の具体例は、下記の通りです。
- 緑黄色野菜:可食部100gあたり、カロテンが600㎍以上含まれている野菜
トマト、人参、かぼちゃ、アスパラガス、ピーマン、ブロッコリー、ほうれん草、小松菜など - 淡色野菜:可食部100gあたり、カロテンが600㎍未満の野菜
白菜、大根、キャベツ、かぶ、玉ねぎ、もやしなど
なお、緑黄色野菜は野菜全体の1/3以上摂る必要があります。1食分(約120g)は、生野菜で両手1杯分、温野菜で片手1杯分が目安となるため、淡色野菜と組み合わせて350gになるように調整しましょう。
出典:厚生労働省(令和5年「国民健康・栄養調査」)
生野菜と温野菜、どっちが健康にいい?メリット・デメリットを比較しました!
生野菜と温野菜にはメリットとデメリットがあります。それぞれの食べ方の違いによる特徴は、下記の通りです。
生野菜のメリット
- 栄養素を丸ごと摂取できる
生野菜に含まれるビタミンの中には、水に流れやすかったり、熱に弱かったりする栄養素があります。生野菜は加熱せずにそのまま食べられるため、栄養素の損失が防げます。 - 食べ過ぎ防止につながり、痩せ体質が目指せる
生野菜は食物繊維が豊富に含まれており、カサもたっぷりあるので、満腹感を得やすくなります。野菜を食べるうちにお腹が満たされ、食べ過ぎ防止につながります。
生野菜のデメリット
- 体が冷えやすい
生野菜には水分が多く含まれているため、寒い時期や体が冷えやすい方が食べると、一時的に体が冷えやすくなるおそれがあります。 - 消化吸収しにくく、胃に負担がかかりやすい
生野菜は温野菜に比べて消化が悪く、胃に負担がかかります。特に、刺激の強いにんにくや玉ねぎなどは、注意が必要です。
温野菜のメリット
- 体が温まりやすい
温野菜を食べることで、体が温まりやすくなり、冷えから守る効果が期待できます。 - 消化吸収しやすい
野菜を柔らかく煮ることで、消化吸収しやすくなります。加熱によって野菜の細胞壁が壊れるため、栄養素を吸収しやすくなります。 - 食中毒リスクが下がる
ウイルスや細菌は、加熱によって死滅するものが多いため、温野菜にすることで食中毒のリスクを下げることができます。
温野菜のデメリット
- 加熱によって栄養素の損失を招きやすくなる
水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質があるため、調理法によっては茹で汁などに栄養素が溶け出してしまうおそれがあります。
生野菜のメリット!生野菜はかさが多いのでダイエットにも良い?
みずみずしく、シャキシャキとした食感が魅力の生野菜は、ダイエット向きの食材です。1日分の野菜を生野菜で摂取するには、両手3杯分の量が必要です。
食物繊維を豊富に含むことから、血糖値の急上昇を抑えられ、体内に脂肪が蓄積するのを防ぐ働きが期待できます。
また、丸ごと野菜を摂取できるため、栄養素を逃がさず摂取できるのもポイントです。水溶性ビタミンであるビタミンB群やビタミンC、カリウムなどは水に流れやすいため、生野菜で食べることで栄養素の損失を防ぐことができます。
ほかにも生野菜には、食物酵素が含まれているため、美容や健康が気になる方にもおすすめです。
生野菜のデメリット!生野菜は胃や消化に悪いって本当?
生野菜はそのまま食べられる手軽さが魅力的ですが、胃への負担や消化吸収の面で注意が必要です。例えば、刺激の強いにんにくや玉ねぎなどは、生食すると胃に負担がかかります。
生野菜は温野菜に比べて消化吸収が悪いといわれているため、胃腸の調子が優れないときは、生野菜を控えることをおすすめします。食べる場合は、スムージーにしたり、すりおろしたりするなど、体に負担がかからないように工夫しましょう。
また、生野菜は水分が多く含まれており、寒い時期や冷えが気になる方が食べると、一時的に体の冷えにつながるおそれがあります。
ダイエットにも悪影響をおよぼしかねないため、体が冷えやすい方は、生野菜だけを食べるのではなく、主食やたんぱく質もバランスよく摂るよう心がけましょう。バランスよく摂取することで、体内で効率良く熱を生み出せるようになります。
温野菜のメリット!消化に良くて食べやすい!
温野菜にすると調理の幅が広がります。温野菜サラダをイメージされる方もいますが、蒸す、煮る、炒める、焼く、茹でるなど、さまざまな調理法で作られたものはすべて温野菜といえます。
加熱調理することで野菜が柔らかくなり、消化吸収しやすくなるのもメリットのひとつです。脂溶性ビタミンのβ-カロテンを豊富に含む人参などは、油と一緒に使用することで体内の吸収率が高まります。
また、野菜を加熱して食べることで、生野菜に比べて体が冷えにくく、血行を良くする働きが期待できるのです。
生野菜には、目に見えない細菌やウイルスが付着している場合があります。しかし、一定以上の温度で加熱すると、細菌を死滅させることができるため、温野菜にすることで食中毒予防につながります。ただし、時間の経過とともに食中毒のリスクが高まるため、早めに食べることが大切です。
さらに、加熱調理することで、野菜をそのまま食べるよりもカサが減り、量を摂りやすくなります。生野菜では両手1杯分ですが、温野菜なら片手1杯分ですみます。特に、葉物野菜はカサが減りやすく、おひたしや和え物にすると手軽に食べることができます。
温野菜のデメリット!栄養素が壊れてしまう危険性も
温野菜のデメリットは、加熱によって栄養素の損失を招きやすくなることです。特に、水溶性ビタミンは水に溶けやすい性質があるため、茹で汁の中に溶け出してしまいます。ビタミンB群やビタミンCに加えてカリウムも、水に溶けやすい性質があります。これらの栄養素を多く含む食材は下記の通りです。
- ほうれん草
- キャベツ
- ブロッコリー
- 小松菜など
とはいえ、野菜スープなど、汁ごと食べられる料理や電子レンジを活用する料理などは、栄養素を逃がさず摂取することが可能です。一方、脂溶性のビタミンは油と相性が良いため、β-カロテンが豊富な人参を油で炒めることで吸収率がアップします。
また、ビタミンCは熱に弱い性質があり、加熱調理によって栄養素が失われやすくなるため注意が必要です。長時間水に浸けないことや茹で時間を短縮するなど、工夫することで栄養素の流出を防ぎやすくなります。
結局生野菜と温野菜、どっちが健康にいい?
生野菜と温野菜、どちらが健康に良いのか気になる方もいるでしょう。しかし、生野菜と温野菜にはそれぞれメリットやデメリットをもち合わせているため、どちらか一方を摂るのではなく、目的に合わせて使い分けることが大切です。
例えば、生野菜はビタミン、ミネラルが豊富で酵素も摂取できます。ただし、消化に時間がかかったり、体を冷やしてしまったりするおそれがあります。一方、温野菜は消化しやすく、体を温める働きがありますが、加熱によって栄養素が失われてしまうことがあるのです。
ただし、野菜の種類によって、消化しやすさや失われやすい栄養素が異なります。酵素については、後ほど詳しく解説します。
生野菜の食べ過ぎで病気になる?肌荒れにも注意
生野菜を食べ過ぎることで、体や冷えやすくなり、消化不良を引き起こしやすくなる可能性があります。カリウムの過剰摂取により、下記の健康被害も懸念されるため、注意が必要です。
- 腎機能が低下している場合:カリウムを多く含む野菜を摂り過ぎることで、高カリウム血症を引き起こすおそれがある
また、生野菜を食べ過ぎると体が冷えやすくなります。腸に負担がかかるため、肌にとっては逆効果になりかねません。腸に負担がかかると、栄養素を吸収しにくくなり、肌に必要な栄養がすみずみまで届きにくくなります。
生野菜の酵素は消化を良くするって嘘?酵素の効果について解説
タンパク質の一種である酵素と美容には深い関係があり、さまざまな面で注目を集めています。生野菜に含まれる酵素には、消化を助ける働きがあるため、健康や美容が気になる方におすすめです。
酵素の働きによって消化がスムーズに行われることで、腸内環境が整いやすくなり、便秘解消などの効果が期待でき、肌荒れやニキビなど肌トラブルにも良い影響を与えます。それぞれの酵素と野菜の具体例は下記の通りです。
- アミラーゼ(炭水化物を分解する酵素):大根、キャベツなど
- プロテアーゼ(タンパク質を分解する酵素)玉ねぎなど
- リパーゼ(脂質を分解する酵素)とうもろこしなど
ただし、食物酵素は熱に弱い性質があるため、サラダや大根おろしなど、生野菜で摂ることが大切です。
生野菜に含まれる酵素は加熱するとなくなるの?
生野菜に含まれる酵素はタンパク質で構成されているため、熱を加えることで本来の働きが失われてしまいます。酵素を効率よく摂取するには、生野菜を活用することが大切です。
また、酵素だけでなくビタミンB群やビタミンCなどの水溶性ビタミンも加熱によって、栄養素の損失がみられます。一方、緑黄色野菜に含まれるβ-カロテンやビタミンEなどの脂溶性ビタミンは、油と一緒に調理することで、吸収率が高まるため加熱向きの食材です。それぞれの特徴は下記の通りです。
特徴 | 熱に強い | 熱に弱い |
主な栄養素 | β-カロテン、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンK | ビタミンB群、ビタミンC、カリウムなど |
具体例 | 緑黄色野菜(人参、ピーマン、小松菜、かぼちゃなど) | 大根、かぶ、レタス、きゅうりなど |
野菜のおすすめレシピ&食べ方○選!胃の不調時や栄養バランス改善に◎
野菜に含まれる酵素やビタミン、ミネラルは、調理法によって吸収率が異なります。野菜にはさまざまなメリットがあるため、調理法を工夫して栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
ここでは、胃腸の調子が優れないときや、時間が限られているときにサッと調理できるレシピと食べ方のヒントを紹介します。効率良く野菜を摂取するために、ぜひ参考にしてみてください。
おすすめの野菜レシピ①鮭のちゃんちゃん焼き
鮭のちゃんちゃん焼きは、1品で栄養バランスが整う時短レシピです。フライパンひとつで調理できて、魚と野菜がたっぷり摂れるため、仕事で疲れているときや手間をかけずに調理したいときにおすすめです。
鮭のちゃんちゃん焼き
[材料](2人前)
- 鮭…2切れ
- キャベツ…1/4個
- 玉ねぎ…1/4個
- 人参…1/4本
- しめじ…1/2パック
- 味噌…大さじ2
- みりん…大さじ2
- 酒…大さじ1
- サラダ油…適量
[作り方]
- 野菜を食べやすい大きさに切る。しめじは石づきを取り、小房にわける。
- 味噌、みりん、酒を合わせ、味噌ダレを作る。
- フライパンを熱し、油をひいてから、鮭を両面焼く。
- 鮭のまわりに野菜を入れ、2のタレをかけて蓋をしてから5分ほど蒸し焼きにする。
- 鮭の器に盛り付けて完成。
冷蔵庫に余っている野菜を使ったり、魚の種類を変えたりしてもおいしく調理できます。
おすすめの野菜レシピ②オクラとなめこのおろし和え
オクラとなめこのおろし和えは、食欲がないときでもさっぱりと食べられるレシピです。大根に含まれるアミラーゼやビタミンCは熱に弱い性質があるため、おろし和えにすることで効率良く摂取できます。
オクラとなめこのおろし和え
[材料](2人前)
- なめこ…1袋
- オクラ…2本
- 大根…150g
- めんつゆ…適量
- 塩…少々
[作り方]
- 熱湯でなめこをさっと茹でる。
- オクラは塩でもみ、熱湯で茹でてから小口切りにする。
- 大根をすりおろして、軽く水気を切る。
- 大根おろし、オクラ、なめこを器に盛り付け、めんつゆをまわしかけて完成。
めんつゆの代わりにポン酢を使用すると、よりさっぱりと食べられます。大根おろしを作るときは、酸化を防ぐために直前ですりおろすのがおすすめです。
おすすめの野菜レシピ③かぼちゃの豆乳ポタージュ
かぼちゃの豆乳ポタージュは、おいしくて栄養満点なレシピです。かぼちゃには熱に強いβ-カロテンが豊富に含まれており、免疫力向上や美肌効果が期待できます。食物繊維も豊富に含まれているため、腸内環境を整えたい方にもおすすめです。
かぼちゃの豆乳ポタージュ
[材料](2人前)
- かぼちゃ…1/8個
- 玉ねぎ…1/4個
- 無調整豆乳…200ml
- 水…200ml
- バター…10g
- コンソメ…1個
- 塩…少々
[作り方]
- かぼちゃは種とわたを取り除き、一口大に切る。
- 玉ねぎは薄切りにする。
- 鍋にバターを入れ、中火で2が透き通るまで炒める。
- かぼちゃを加えてさらに炒める。
- 水、コンソメを加えて、かぼちゃが柔らかくなるまで約10分煮込む。
- 5をミキサーにかけてから鍋に戻し、豆乳と塩を加えて弱火で温める。
- 器に盛り付けて完成。
牛乳の代わりに豆乳を使用することで、カロリーや脂質を抑えることができます。豆乳には乳糖が含まれていないため、乳糖不耐症の方でも安心です。たくさん作って冷凍庫にストックしておくと、すぐに使えて便利です。
生野菜と温野菜はバランスよく食べよう!不調時は温野菜やスープがおすすめ
生野菜と温野菜にはそれぞれメリットとデメリットがあります。どちらかに偏ることなく、バランス良く食べることが大切です。
消化不良など、体調が優れないときは、胃に負担がかかりにくい温野菜がおすすめです。電子レンジを活用して蒸し野菜を作ったり、野菜をコトコト煮込んでポトフを作ったりするなど、工夫しながら体に必要な栄養素を補いましょう。
この記事を書いた人(執筆者情報)

下田 由美 – 管理栄養士
管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気付く。現在は、「食はココロとカラダを元気にする」をモットーにフリーランスの管理栄養士として活動中。健康や栄養に関する記事執筆や監修、レシピ作りなどを行うだけでなく、美容や健康でお悩みの方に対して栄養指導を行い、日々多くの方々の健康づくりをサポートしている。フードアナリストの資格も保有。
この記事を監修した人(監修者情報)

美容家ドットコム編集部 – 監修者
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本記事は、美容家ドットコム編集部が専門家と協力し、内容を精査・監修のうえ執筆されています。