薬膳における心と身体の整え方「補・瀉・調」
こんにちは。管理栄養士×国際中医薬膳師の相川朋世です。
栄養学×薬膳で心と身体を整える〈ココカラおうち薬膳〉をお伝えしています。
冬に温かいものを食べる、寒気のする風邪をひいたからショウガ湯を飲むなど、“目的に合わせて作る料理”は薬膳ということができます。
薬膳の作り方
食材には、「酸・苦・甘・鹹・辛」の5つの味(五味)と食材が身体に入ってきたときの寒熱性を表す「寒・涼・温・熱」の四気、そして、その食材が五臓六腑のどこに効くのかを帰経といいます。
これら3つの特性を活かして、目的に合わせて心や身体の調子を整える食事が薬膳ですが、その整え方はシンプルで「補・瀉・調」の3つ、補う・除く・調和させるというものです。
薬膳の3つの治療原則
補(足りていないものを補う)
食物で気血や臓腑を補益し、体質を改善することをいいます。
疲れていれば元気の源の「気」を補う、乾燥では「水」や「血」を補うなど、身体に足りていないものを、食物を通して補っていくことをいいます。
〈例:気虚〉疲れやすい・やる気が出ない・風邪をひきやすい・冷えるなどがあるときは、穀類、芋類、きのこ類などで「気」を補います。
〈例:血虚〉顔色が青白い・髪の毛が抜ける・めまい・目の乾燥などがあるときは、肉類、ホウレン草やニンジン、黒豆などで「血」を補います。
〈例:陰虚〉のどの渇き・ほてり・耳鳴り・肌の乾燥などがあるときは、卵やすっぽん、イカなどで身体を潤します。
これらの症状には食事で不足したものを補えば、体質を改善することができます。
瀉(余分なものを取り除く)
身体に入ってきてしまった外邪や過剰になってしまったものを取り除き、体質を改善することを言います。むくみがあれば、余分な水分を取り除く、熱がこもっていれば冷ます、食べすぎていれば消化を助けるのどがあります。
〈例:水液の停滞〉むくみ・尿が少ない・重だるさがあるなどは、ハトムギやキュウリ、豆類などで余分な水分を排出させます。
〈例:熱の風邪〉高熱が出る・のどが渇くときなどは、緑茶やキュウリ、豆腐などで身体の熱を取り除きます。
〈例:食べすぎ〉食べすぎによる下痢、胃痛・口内炎・口角炎などは、サンザシや大根、紫蘇などで胃にこもった熱をとったり、消化を促すようにします。
これらの症状には過剰になったものを取り除いたり、熱を冷ます食材の力を借りて、改善させることができます。
調(バランスを整える)
中医学で不調が出る要因は全て“陰陽のバランスが崩れているから”と考えられています。
人体の機能が正常に機能するためには、全体のバランスが整う(陰陽平衡)の状態が保たれていなくてはなりませんが、生まれながらの体質であったり食習慣や生活習慣によってバランスは常に変わっていくので、その都度調節していかなければなりません。
補・瀉も含め、寒がりさんは身体を温める食材を、ストレスをためがちな人は気の巡りをよくする食材や肝をケアする食材を食べるなどをして、身体のバランスを調節します。
まずは自分の体質を知ることから始めよう
今では薬膳や中医学も広がって、検索をすれば体質チェックシートが出てきて、ある程度自分の体質を把握することができます。しかし、人間の身体は複雑なため、複数の項目に当てはまり、いったい何をすればいいのかわからなくなり、チェックしただけで終わってしまうことが少なくはないでしょう。
オススメなのは、中医学の勉強をした人のカウンセリングを受けることですが、ハードルが高いと思う場合は、食事の写真を撮るだけでもいいです。そして、何か不調が出た場合は手帳などにメモをしておきましょう。同じ不調が起きた場合など、その前に起きた時と同じ場合もあります。簡単に言えば、飲み会の翌日に口内炎ができる、カフェラテを飲んだ日は足がむくむなど、そういった日常の変化でも自分を知るきっかけになります。