大豆イソフラボンを過剰摂取すると起こる身体への影響とは?

大豆イソフラボンを過剰摂取すると起こる身体への影響とは?

歳を取るにつれて「若い時とは違う気がする…」と感じる時もあるでしょう。髪をかき分けたときに白髪の大軍を発見したり、新しく入った20代の後輩の肌つやを目の当たりにしたり、日々の生活の中で老いを自覚せざるを得ないタイミングに遭遇します。
「忙しい毎日の中でも続けられることを」と、ドラッグストアやスーパーで手軽に買えるサプリメントや飲料を検討し始める方も多いのではないでしょうか。
 
今回はそんなミドル世代の女性をサポートしてくれる「大豆イソフラボン」について、中医薬膳(中国伝統医学を用いた食事方法)の視点を中心にご紹介します。

大豆イソフラボンって何?成分や働きをチェック!

 
大豆イソフラボンとは、主に大豆の胚芽に多く含まれるフラボノイド(ポリフェノールの一種)で、大豆イソフラボンと大豆イソフラボンアグリコンの2つのタイプが存在します。大豆イソフラボンは通常、糖が結合した構造(配糖体)をしていますが、糖がはずれた構造のものを大豆イソフラボンアグリコン(非配糖体)といいます。
大豆イソフラボンはその化学構造が女性ホルモン(エストロゲン)に似ていることから植物エストロゲンとも呼ばれています。
  
味噌、納豆等の大豆発酵食品中には大豆イソフラボンアグリコンが多く含まれており、大豆イソフラボンの適切な摂取量の目安として、食品中に含まれる大豆イソフラボンアグリコンの量を基準に考える必要があります。
 
中医薬膳においては大豆イソフラボンは「有効成分」のようなミクロの視点でなく「大豆そのもの」というマクロの視点でとらえます。
大豆は気を補い(元気をつけるという意味合い)水分代謝を上げるような働きをすると考えられています。

大豆イソフラボンは薄毛を予防してくれる?大豆イソフラボンの効果とは

 
アラフォー世代は、プライベートでは出産や育児、仕事においては責任あるポジションにつき、ストレスをより感じやすい年代です。薄毛や抜け毛など髪の毛のトラブルも気になってくる頃ではないでしょうか。
 
大豆イソフラボンは女性ホルモン「エストロゲン」と構造が似ていますが、ホルモンはタンパク質でできており、髪の毛の主成分もタンパク質であるため、大豆イソフラボンは髪の毛を作る材料の一つと捉えることができます。
 
中医薬膳においては、黒豆が薄毛の予防には効果があり、大豆はそれをサポートする食材です。
中医薬膳では、髪の毛は「血の余り」と表現されます。年齢を重ねるにつれて髪が薄くなったり、特に女性は出産の際に髪の毛が抜ける方も多いですが、これは子供を生む時や授乳の際に多量の血液が使われるためです。自分の髪の毛を滋養するのが難しいくらいたくさんの血液が使われるのです。
 
血液を作る効果があるのは、別名「黒大豆」と呼ばれる黒豆です。黒豆も大豆と同様に水分代謝を上げる効果が高く、ミドル世代の女性にはうれしい食材です。

黒豆が消化・吸収され、丈夫な髪の毛を生やすために、大豆がその消化と代謝を上げるサポートをしてくれます。

大豆には他にも、消化不良や便秘、美肌、元気をつけ、疲労を回復する、血圧を下げる、などの効果が期待できます。
 

大豆イソフラボンが多く含まれる食材とは

 
大豆イソフラボンを摂取するためには、大豆を食べる以外にも、大豆の加工品から摂ることができます。

手軽に買える大豆の加工品は、納豆、豆乳、湯葉、豆腐などがありますが、同じ大豆からできているとは言え、中医薬膳の視点ではその効果が少しずつ異なります。

大豆(大豆イソフラボンアグリコンとして140.4mg/100g)

  • 元気をつける
  • 水分代謝を上げる

味噌(同49.7mg/100g)

  • お腹の冷え
  • コレステロールの抑制と排泄

納豆(同73.5mg/100g)

  • 身体を温める
  • 血の巡りを良くし、血栓予防につながる

豆乳(同24.8mg/100g)

  • 身体の水分量を上げ空咳や口の乾きが治る
  • 母乳の出が良くなる

 

豆腐(同20.3mg/100g)

  • 身体の熱をとる
  • 身体の水分量を上げる

 
より自分の体質にあった食材で大豆イソフラボンを摂っていきたいですね。
 

日本人は大豆イソフラボンを過剰摂取している?一日の摂取目安量

 日本人は大豆イソフラボンを過剰摂取している?一日の摂取目安量
どんなに身体に良い食材でも、過剰摂取は避けたいものです。昔から大豆と共に生きてきた日本人は、一日にどれぐらい大豆イソフラボンを摂取しているのでしょうか?
 
平成14年国民栄養調査(厚生労働省)による大豆・大豆製品、醤油、味噌などの食品摂取量から試算した大豆イソフラボンアグリコンの摂取量は、16〜22mg/日とされています。

食品安全委員会新開発食品専門調査会では、「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」において、特定保健用食品としての大豆イソフラボンの安全な一日上乗せ摂取量の上限値を30mg(大豆イソフラボンアグリコン換算)としています。

大豆イソフラボンアグリコン30mgというのは、食材量で表すと具体的には、以下の量になります。

  • 大豆:約21g(大豆パック約3分の1)
  • 味噌:約60g(大さじ約3杯分)
  • 納豆:約41g(納豆パック1個分)
  • 豆乳:約121g(豆乳200mlパック半分強)
  • 豆腐:約148g(豆腐パック約半分)

 
この量は、日々、大豆製品を意識して選ぶことで、十分摂取できます。例えば「豆腐約148g」は、寒い冬であれば、鍋の具材としてあっという間に食べてしまう量ですね。

日本人は、豆腐、納豆、味噌などの「伝統的な大豆食品」について、日常の食生活における長い食経験があるため、これらの大豆食品を食べることによる大豆イソフラボンの健康への有害な影響が提起されたことはなく、心配する必要はありません。

また、大豆は「大豆イソフラボン」だけでなく、カルシウム等にも富んでいますので、食生活の中で他の食品と共にバランス良く食べることが大切です。

近年では「大豆ミート」など、新しい大豆加工製品もメジャーになってきました。新しいものも楽しみながら「大豆イソフラボン」を摂取していきたいですね。

大豆イソフラボンを過剰摂取するとどうなる?身体への影響を解説

健康ブームにより、大豆が再び注目を集めるようになってきました。スーパーへ行くと、豆乳一つとっても、様々な味が楽しめるように工夫がこらされています。
 
楽しみながら大豆加工製品を色々試しているうちに、いつの間にか一日の摂取量を超えていた!ということも考えられます。最後に、大豆イソフラボンを過剰摂取した場合、身体への影響について紹介します。
 
上記の通り、大豆製品を食べることによる大豆イソフラボンの健康への有害な影響は提起されたことがありません。

また、最初にもお伝えした通り、エストロゲン受容体に結合することができるのは「大豆イソフラボンアグリコン」であり、「大豆イソフラボン(配糖体)」ではありません。「大豆イソフラボン」の過剰摂取について注意が必要なのは「特定保健用食品」による場合です。
 
その理由として、以下が挙げられます。
 
①天然の食品成分でも、過剰摂取により健康被害が報告されている成分が存在すること(セレン等)
②女性ホルモンと似たような働きをするため、過剰摂取することでその働きが有害性を持つものに変わる可能性があることが発表されています。

特に②に関して、エストロゲンが過剰に出た場合に起こる症状としては、女性の場合、乳がんや子宮体部がんが有名です。男性でも乳房の女性化や低身長、前立腺肥大を引き起こすという報告がされています。
 
しかし、上記で紹介した女性や男性への体の影響というのは、あくまでも「エストロゲン過剰」の場合です。「大豆イソフラボン」の過剰摂取については、未だ健康被害の報告がないことから、目安量を超えても、すぐに重大な健康被害に遭うということはないと考えられます。
 
とは言え、一日の大豆イソフラボンアグリコンの摂取量の目安である30mgを大きく超えるような生活を続けている場合は、今後の健康を考え、それを上回らないよう早めに改善する必要があるでしょう。
 
中医薬膳の世界でも大豆の過剰摂取により身体のバランスを大きく崩した、ということは聞いたことはありません。ただし、身体がむくみやすいのに「水分量を上げる」豆腐や豆乳を取りすぎてむくみが改善されない、といったことはあります。
むくみやすい体質の場合は大豆そのものや納豆など、水分量の少ない大豆製品を選ぶ方が、より薬膳らしい食材の選び方をしていると言えるでしょう。
 
身体に良いことづくしの大豆イソフラボンを、自分の生活にあったスタイルで楽しみながら取り入れていきましょう!

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nana
鈴木 綾
国際中医薬膳師